分別功徳品
     
 
     
 
 
分別功徳品(ふんべつくどくほん)
 

 

 「平家納経」の中でも特に華麗な一巻。
この結線経(けちえんきょう)の奉行(ぶぎょう)をつとめた左衛門少尉平盛国(さえもんのしょうじょうもりくに)(52歳)の分担である。
 表紙・見返し・本紙の表裏をすべて紫色に染めた地紙に、金の切箔(きりはく)・砂子(すなご)をきらびやかに飾る。
表紙から見返しにかけて花開く蓮池。その辺(ほとり)に僧俗男女(なんにょ)が輪座(りんざ)する。
下方に「加」・「奈」の字様は葦手(あしで)か。
だが、一連して詠めない。
冠直衣(かんむりのうし)の貴公子、尼削(あまそ)ぎに掛帯(かけおび)(物忌(ものいみ)・仏事に肩にかける赤い紐)の若い女。
さながら「源氏物語絵巻」(徳川・五島美術館蔵。十二世紀末)の世界。
信仰と大和絵(やまとえ)の結合に、貴族生活の耽美牲(たんびせい)をうかがう。

 
 
 
     
 
表紙
   
見返し
 
本文
 
閉じる