まず、表紙。二人の男が縛(しば)られて、頭巾(ずきん)をかぶり股立(ももだ)ちをとる老人に鞭(むち)で追い立てられる。この経文の偈(げ)「手足に※械(てかせあしかせ)を被(こう)むらんに、彼(か)の観音力(かんのんりき)を念ぜば釈然(とけさり)て解脱(まぬが)るることを得ん」の絵画化。見返しは、『大唐西域記(だいとうさいいきき)』(巻第十一)の僧伽羅国(そうきゃらこく)(セイロン畠)の説話(せつわ)による。これは、『宇治拾遺(しゅうい)物語』(九一・僧伽多羅国(そうきゃたらこく)に行く事)にも収められる。インドの貿易商人・僧伽羅(そうきゃら)が難船して羅刹国(らせつこく)(セイロン島)に漂着。羅刹女(らせつにょ)を妻とした。が、のちその正体(しょうたい)を知り逃(のが)れる。
女は悪鬼となり追う。観音力(かんのんりき)を念ずると海中から白馬が現われ、それに相乗りして助かった。
日本に根付いた「物語」の説話の絵画化である。
※木偏に丑 |