涌出品(ゆじゅつほん)
     
 
     
 
 
※累品(ぞくるいほん)
 

 

 如来が宝塔の説法(せっぽう)の座から下りると、聴聞(ちょうもん)に集(つど)う幾千万億の菩薩(ぼさつ)たちの頭をなでて、減後(めつご)における『法華経』の流布(るふ)を委嘱(いしょく)した。「神力品(じんりきほん)」に連続する。
元の表紙・見返しは早くに失われたらしく、福島正則による補修時に、俵屋宗達(たわらやそうたつ)の絵筆に改められた。
「平家納経」の中には珍しく、紺紙金泥経(こんしこんでいきょう)の一巻。本紙の天地に蓮弁唐草文(れんべんからくさもん)の装飾画を連ねている。
総裏(そううら)は金砂子(きんすなご)。
経文(きょうもん)を書くための界(かい)(罫(けい))が、金銀の二重に画(かく)されているのも異例で、敬虔(けいけん)な祈りを思う。肉太(にくぶと)の楷書(かいしょ)を謹厳に運ぶ金泥文字。
ゆるやかな運筆の中に能書の才(ざえ)が光る。しかるべき能書(のうしょ)の公卿の代筆か。

※口偏に屬

 
 
 
     
 
表紙
   
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